カスタマーサクセス担当なら身につけたい6つの基礎コンピテンシー




Customer Success Managerという肩書きでシゴトとしていると、従来のカスタマーサポートとの考え方の違いの話から、「どんな人が向いているんですか?」「どんなスキルセットが必要なんですか?」という質問をよくお受けします。

そんな中で、答えになりそうな文献をいろいろあさっていくうちに、BABOK(ビジネスアナリシス知識体系ガイド)に出会いました。このBABOKで整理されている情報が、カスタマーサクセスマネージャーやアカウントマネージャーといった、クライアント企業の担当者と向き合って自社のサービスやソリューションを提供していく役割の人にもツカえると感じ、まとめてみることにしました。

なお、BABOKは「ビーエーボック」と読みます。

BABOKから読み解く6つの基礎コンピテンシー

BABOKは、ビジネスアナリシスを担当する人に向けて書かれた知識体系のガイドブックです。ビジネスアナリシスについて、BABOKにはこんな記述がされています。

ビジネスアナリシスは、ニーズを定義し、ステークホルダーに価値を提供するソリューションを提供することにより、エンタープライズにチェンジを引き起こすことを可能にする専門活動である。ビジネスアナリシスによって、エンタープライズはチェンジの必要性と合理的根拠を明確にでき、価値を提供するソリューションのデザインを記述できる。

…それにしても分かりづらいです。(それぞれの用語に定義がされているので意図的にカタカナ用語を多用しているようです。)

とは言っても、「企業にソリューションを提供することで価値を提供し、変革を促していく」というビジネスアナリシスの活動は、とくにエンタープライズB2B領域のカスタマーサクセスマネージャーやアカウントマネージャーの業務領域とも重なるところが多いと感じられるのではないでしょうか。

そして、このビジネスアナリシス活動に必要なコンピテンシーや知識、テクニックをまとめたのがBABOKというわけです。

そこで、ここからはBABOKの基礎コンピテンシーを紐解いていきましょう。

基礎コンピテンシー一覧

6つの基礎コンピテンシーを表にまとめると、以下の通りとなります。

分析的思考と問題解決 創造的思考
意思決定
学習
問題解決
システム思考
概念的思考(New!)
ビジュアル思考(New!)
行動特性 倫理
個人的アカウンタビリティ
信頼感
仕事の整理と時間管理
適応力
ビジネス知識 ビジネス感覚
業界の知識
組織の知識
ソリューション知識
方法論の知識(New!)
コミュニケーションスキル 言語コミュニケーション
非言語コミュニケーション(New!)
文書コミュニケーション
傾聴(New!)
人間関係のスキル ファシリテーション
リーダーシップと影響力
チームワーク
交渉による追突解消(New!)
教えるスキル
ツールとテクノロジー オフィス生産性のツールとテクノロジー
ビジネスアナリシスのツールとテクノロジー
コミュニケーションのツールとテクノロジー
いかがでしょうか? ひとつひとつのコンピテンシーはどれも普段のカスタマーサクセス業務に必要なものであり、かつ体系的に分類されています。

また、New!と表記した箇所は、BABOK第2版(2009年)のあと、第3版(2015年)のタイミングで新たに登場した項目です。近年、より重要度が増してきている項目になります。

(1)分析的思考と問題解決

クライアントの課題解決を、自社が提供できるソリューションやサービスで実現できるかを分析、判断すること。また、意思決定をおこなったり、関係者に意思決定を促していくこと。これらはカスタマーサクセスマネージャーの主要な業務です。

さらに、個々の細かな情報を大局的(創造的・概念的)に整理し、必要に応じてビジュアルも活用しながら必要な情報をわかりやすく表現する能力も必要です。

分析的思考と問題解決に含まれるコンピテンシー
  • 創造的思考
  • 意思決定
  • 学習
  • 問題解決
  • システム思考
  • 概念的思
  • ビジュアル思考

(2)行動特性

この項目はカスタマーサクセスマネージャーだけではなくビジネスパーソン全般に必要な能力ですが(BABOKにもそう書いてあります)、このコンピテンシーを持っておくことは、クライアントとプロジェクトを進めるためには避けて通れません。

とくに私が重要視しているのがアカウンタビリティ(説明責任)。やはりクライアントとしても、自分ゴトとして考え、行動してくれるカスタマーサクセスマネージャーとシゴトしたいと考えるのではないでしょうか。

行動特性に含まれるコンピテンシー

(3)ビジネス知識

例え自社のソリューションにはものすごく詳しくても、クライアントのビジネスへの理解がなければ、正しく価値提供ができません。「すぐにわかる○○業界」といった本がたくさん売られていますので、まずは1冊流し読みをして業界知識を得るところからでもよいので、クライアントのWebサイトを見る、ニュースを検索する、決算資料を読むといった小さな活動の積み重ねが、ビジネスへの理解を広げていくはずです。

ビジネス知識に含まれるコンピテンシー
  • ビジネス感覚
  • 業界の知識
  • 組織の知識
  • ソリューション知識
  • 方法論の知識

(4)コミュニケーションスキル

カスタマーサクセスマネージャーの業務は、クライアントからのメッセージを確実に受け取り、また、必要な情報をクライアントや社内外の関係者に伝えていく活動の繰り返しです。
特に、担当者によって差が出ると考えているポイントが、クライアントが出しているアラートを確実にキャッチできるかどうか。これが的確にできないと、適切なサーボスを提供できないばかりでなく、解約の危機を迎えてしまいます。こういったアラートの多くは非言語コミュニケーションが使われるもの。クライアントからのメッセージを受け取る「感度」を上げる特訓をしておきたいものです。

コミュニケーションスキルに含まれるコンピテンシー
  • 言語コミュニケーション
  • 非言語コミュニケーション
  • 文書コミュニケーション
  • 傾聴

(5)人間関係のスキル

カスタマーサクセスマネージャーは、日々、クライアントや社内外の関係者とコミュニケーションをとり、リーダーシップを発揮し、提供するサービスの価値の理解を取り付けながらその価値を大きくする活動をしていきます。

また、時には意見の違いを整理したりひとつにまとめあげていく作業も必要なので、「交渉」も必要なスキルにあがっていますね。

人間関係のスキルに含まれるコンピテンシー

(6)ツールとテクノロジー

BABOKでいうツールとテクノロジーには、業務遂行に必要なアプリケーションやツールを使いこなせるようになることをさしています。具体的には:
・WordやExcelPowerPointといったオフィス系ツール
・メールやビデオ会議といったコミュニケーションツール
・成果物を作ったり管理ための作図やプロジェクト管理系ツール
をさしているようです。

しかし、カスタマーサクセスの業務を考えると、上記のほかに自社ソリューションについての理解も含めて考えた方がよいでしょう。自社ツールにもっとも詳しい人になれれば、クライアントからの要求にも応えやすくなりますし、解決策や課題回避策を考えることもできるようになります。

いずれにしても、新しいツールやテクノロジーを積極的に試し、活用していくことが大事です。

ツールとテクノロジーに含まれるコンピテンシー
  • オフィス生産性のツールとテクノロジー
  • ビジネスアナリシスのツールとテクノロジー
  • コミュニケーションのツールとテクノロジー

BABOKについて、もう少し詳しく知りたい方へ

itproにいくつか記事があったのでご紹介。
itpro.nikkeibp.co.jp
itpro.nikkeibp.co.jp

解説書ではこちらがわかりやすかったです

ホンキなら、こちらもどうぞ(高いから覚悟の上で!)